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はじめに
脳卒中患者の入院リハビリテーションにおいて使用することを目的として,あらかじめ定められた時点での患者の機能的状態を入院時データと多変量解析を用いて予測するシステム(Recovery Evaluating System;RES)が開発されている1).RESは複数のリハビリテーション医療施設で実用に供されてきているが,RESを利用するには各リハビリテーション医療施設に入院した多数患者のデータベースを必要とするため,その利用は一部のリハビリテーション医療施設に限定されている2).
最近,各施設独自のデータベースがなくても使用できる簡易版としてのRES-4が開発された3).RES-4は入院時の医学的情報と運動年齢検査(MOA),上肢機能検査(MFS),バーセル・インデックス(BI),改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)あるいはミニメンタル・ステート(MMS)を用いて各評価尺度の値を予測する.その予測式の寄与率は3種の評価尺度(MOA,MFS,MMS)で80%以上,BIでは70%程度である.
脳卒中患者の機能的状態に関する予測式の適用可能性は予測値と実測値との間の一致度から検討されている4).例えば,RES-3を作成するためのデータベースとなった患者群とは異なる同一のリハビリテーション医療施設に入院した患者群を対象として,その適用可能性を検討した報告では,4種の評価尺度(MOA,MFS,BI,MMS)で示される脳卒中患者の機能的状態を正確に予測することが可能であった5).一方,RES-3のデータベースでその作成に関与しなかったリハビリテーション医療施設の入院患者にそれを適用した研究では,3種の評価尺度(MOA,MFS,MMS)においてRES-3の適用は可能であるが,BIに関しては入院時BI≦30あるいは認知障害がある患者では予測値と実測値の不一致があると報告されている6).
これらの研究は,RES-4が多くのリハビリテーション医療施設で使用可能となるためには,RES利用に関するこれまでの実績の有無にかかわらず複数のリハビリテーション医療施設に入院している脳卒中患者を対象として,その適用に際しての注意点を検討することが必要であることを示している.そこで,RES-4の適用に際しての注意点を明らかにするため,複数のリハビリテーション医療施設に入院している脳卒中患者を対象にBIに関する予測値と実測値との間の差(△D)が±10以内か否かを基準として,その不一致に関わる要因を検討した.
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