Japanese
English
特集 老人の脊髄損傷
脊髄損傷と加齢に伴う重複障害
Double Disability of Spinal Cord Injury and Anothers in the Elderly.
吉村 理
1
,
林 克二
1
,
西野 興史
1
,
田中 由香
1
Osamu Yoshimura
1
,
Katsuji Hayashi
1
,
Koshi Nishino
1
,
Yuka Tanaka
1
1九州労災病院リハビリテーション診療科
1Department of Rehabilitation Medicine, Kyushu Rosai Hospital
キーワード:
高齢脊髄損傷
,
重複障害
Keyword:
高齢脊髄損傷
,
重複障害
pp.431-437
発行日 1990年6月10日
Published Date 1990/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552106284
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はじめに
一般には60歳または65歳以上の脊髄損傷者を高齢脊髄損傷とする.高齢脊髄損傷の特徴1)として,①X線上,骨傷が明らかでない例が多いが,頸椎症性変化・後縦靱帯骨化などの脊柱管狭窄病態を有する,②屋内での転倒など軽微な外力による受傷が多い,③過伸展損傷による頸髄不全損傷,特に中心部損傷2)が高率に認められる,④不全麻痺例でも若年者に比べてリハビリテーション・ゴールは低い,⑤完全麻痺例では,生命の予後も含めて予後不良である,⑥従来少ないとされていた骨粗鬆症・脊椎圧迫骨折による対麻痺例も決して稀ではない,などが言われている.
老人脊髄損傷は以上述べた高齢者が脊髄損傷を受傷するほかに,青壮年時に脊髄損傷を受傷し高齢となる2つのグループがある.脊髄損傷者の寿命についての報告3,4)は多くはないが,第二次世界大戦前の死亡率に比べて現在では脊髄損傷者の寿命も著しく延長しているのは確実であり,脊髄損傷者の寿命も健常者より数年から10年程度短いと推定される.従来,慢性期死亡原因の第1位であった腎不全にかわって,最近の慢性期脊髄損傷者の健康調査報告5)によると糖尿病など一般成人病が認められ,したがって慢性期脊髄損傷者の死亡原因6)も悪性腫瘍,心臓病,脳血管障害と一般人の死亡原因と同様になりつつある.
本稿のテーマは脊髄損傷者の加齢に伴う重複障害であるが,脊髄損傷受傷後に発生した脳梗塞片麻痺や閉塞性動脈硬化症による下肢切断,脳梗塞後に転倒し受傷した脊髄損傷と脊髄損傷受傷時と同時に脳挫傷を合併受傷した例など,我々が経験した老人の脊髄損傷との重複障害例を述べる.
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