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はじめに
リハビリテーション(以下リハビリ)医療における心理社会的観点の重要性は,改めて述べるまでもないだろう.障害受容などの患者心理や社会的不利への配慮は勿論のこと,運動学習が中心になる訓練過程,複雑な医療者-患者関係を有するチームアプローチなどがリハビリ医療の特徴だからである.
しかし,実際の臨床場面で心理社会的側面へ十分な配慮を払うには,いくつかの問題があるように思われる.医師の卒前・卒後教育における医療心理学的訓練の不足は,医療界全体でも問題になっている.リハビリ医療ではそれに加えてチームの構成各職種の歴史が浅く,心理社会的側面に関する教育制度の差やばらつきが大きい.さらに,リハビリ医療は社会的不利に最終目標をおく理想論的概念を掲げているが14),この概念は歴史が浅く総論的であるため,現場でその実行にあたるチーム内の各医療者の指針が,十分に一致しているとは言いがたい.したがって,このような状況の中で,全人的医療を円滑に行うには,チーム自身何らかの心理社会的側面を含む系統的手段を有する必要があろう.
一方,近年,身体面だけでなく心理社会面をも重視する包括医療を目的とした,身体疾患を扱う各科(身体科)と精神科との協力体系として,リエゾン精神医学が注目されつつある8,10).リエゾンとは「連絡,連携」の意味で,しばしばコンサルテーション・リエゾン精神医学などと呼ばれてきた.これは従来の精神科依頼や単なるコンサルテーションとは異なり,はじめから精神科医をチーム構造に加えて,一貫した継続的協力体制を創り上げ,包括的医療の実行を図ろうとする総合病院精神医学(general hospital psychiatry)の一形態である8).そこでは,患者の精神科的診断は勿論であるが,それよりさらに,患者心理,医療者心理,医療者-患者関係,医療者チームの集団心理などを扱うことになる.著者らはこのリエゾン精神医学の実践としてのリエゾン・カンファレンス(以下リエゾン会議)を包括的リハビリ医療の推進のために取り入れてきた.そこで今回は,約2年間の経験をもとにリハビリ医療におけるリエゾン会議の意義について考察する.
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