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はじめに
リハビリテーション医療の対象となる患者は,生涯にわたって永続する障害に起因した多くの対象喪失を体験する.しかも障害の克服という苛酷な心理的状況下にリハビリテーション・プログラムに参加しなくてはならず,治療チームとの関わり合いの中で,患者・治療者・家族の心理が錯綜する.種々の防衛機制を伴った悲哀の仕事,対人関係や役割転換に伴う種々の問題に対して,非合理的,非現実的な心理的葛藤が患者の症状増悪や行動に反映されたり,陰性感情の引き金となって,リハビリテーション・アプローチを阻害することも稀ではない1).
我々はリエゾンカンファレンスを開催し,これら諸問題に対応してきた,リエゾン精神医学1)とは精神科と身体科が協力して行う新しい総合病院診療形態の一つである.当教室でのリエゾンカンファレンスの実際や開催当初からの経緯についてはすでに報告したが2,3),そこでは力動精神論に基づく患者心理の考察,患者・家族・治療者間の転移・逆転移を含めた対人関係・治療関係,さらに治療チーム構造の見直しや役割分担の明確化などを扱う.すなわち,疾患中心的(illness-centered),患者中心的(patient-centered)なだけでなく,関係中心的(relation-centered),状況中心的(situation-centered)考察が行われる.
今回,当院でのリハビリテーション終了後,家族との心理的葛藤を契機に身体症状の悪化をきたし,緊急再入院した脳梗塞患者へのリハビリテーションを経験した.リエゾンカンファレンスで何が討議され,どのような対応を行ったか,そしてこの症例を通して我々が何を学んだかについて,先の問題点を踏まえながらその診療経過を報告したい.
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