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はじめに
一般に心理的評価(psychological assessment)とは面接,行動観察,および心理検査を通じてパーソナリティ,精神障害の有無,情緒反応(不安,抑うつ状態など)の程度,知的能力,および適性を適切に把握することを目指している.
リハビリテーション(以下リハビリと略す)臨床においては,「心身症」と称される疾患群(痙性斜頸,慢性疼痛症など)の診断や復職へ向けての適性評価のみならず,高次脳機能障害患者や通常の身体訓練中心のプログラムにのらない「問題患者」への対応法の資料など,心理的評価を要すると考えられる状況は少なくない.しかし,身体機能訓練中心の一般リハビリ・スタッフ(筆者も含めて)にとって,とかく心理的評価は馴染みにくいのが現状ではなかろうか?それは,非心理スタッフはどのような態度で患者に接し,どんな点に着目して情報を集めるべきかが明確ではない上に,評価の客観性について自信がもてないことが主な原因と考えられる.
このような状況から,リハビリにおいては心理的評価は心理検査のみに頼るか,あるいは面接を精神科へ直接依頼する傾向があった.しかし,心理検査のみでは後に述べるような限界を免れえず,また十分な配慮なしに精神科へ依頼された場合,その事実自体が患者の外傷体験となって一層事態を悪化させる,といった弊害もしばしば認められていた.
以上の問題点をふまえて,本稿では心理的アプローチに馴染みの少ないリハビリ・スタッフを想定し,まず面接の技法および行動観察について簡単に触れたのち,代表的な人格検査をとりあげ概説を加える.
なお,評価の背景となる心理学理論も力動精神医学から行動療法的立場までさまざまであるが,今回はリハビリ臨床の立場で必要と思われる点を述べるにとどめ,詳細は成書にゆずることとする.
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