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いとぐち
リハビリテーションに限らず,医学のどの分野においても,心理的見地を等閑視し得ないことは周知のとおりである.
世界保健機関の定義によれば,健康とは,“完全な肉体的,精神的および社会的福祉の状態であり,単に疾病または病弱の存在しないことではない”としているし,また,国連総会では,障害者を,“先天的か否かにかかわらず,身体的または精神的能力の障害のために,通常の個人生活ならびに社会生活に必要なことを自分自身では,完全にまたは部分的にできない人”としている.つまり,身体的状態が扱われる時は,常に心理社会的な面も問われてきたのである.逆にいえば,治療という時は,これらの面が同時に考慮されなければならないといえよう.
リハビリテーションの先人の言葉で,すでに人口に膾炙されているものにも,いま振り返ってみると,この心理社会的な意義がつとに指摘されていたといえる.いわく,“人間にとって,最も自然でかつ効果的な治療法は,仕事に就くことである(Gallen)”,“リハビリテーションとは,生命に年齢を加えるだけではなく,その年齢に生命を加えることである(Rusk HA)”,“失ったところを考えるな,残されたところを考えよ(Guttmann L)”,“障害者とは,障害された人ではなく,障害を持った人である(Wright BA)”等々.
これまでは,身体的改善に充分意を尽くした上で,心理社会的問題の解消を図るという余裕があった.しかし機能障害や形態異常を大きく残す可能性のある今日,むしろ心理社会的適応を,早期より積極的に講じなければならないようになってきた.
障害の重度化・重複化・多様化のみならず,社会全般の老齢化という傾向に際し,今後リハビリテーションにおける心理的アプローチは,ますます重要になると思われる.以下,リハビリテーションの過程に表れる心理的諸問題について幾つかの検討を試み,心理的アプローチの一助としたい.
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