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はじめに
頸部はその中心にある頸椎をみても,人体の中で最も可動域が広く,構築的に不安定なところである.また,その周辺部も,解剖学的あるいは生理学的にも弱点を有している.
そのため,頸部,肩胛帯,上肢などに疼痛,筋緊張亢進,知覚障害など多彩な愁訴にて来院する患者は多い.また,頸部に障害を持つ患者の中には後頭部交感神経症候群(Barre-Lieou Syndrome)やレイノー症候群(Raynoud Syndrome)等の血管運動症候群を合併したり,心理的にも問題を有することなどにより,治療にあたり苦労することはしばしば経験するところである1~4).
その治療法も多くのものがあるが,一般に広く行われている保存的治療は,消炎鎮痛剤,筋弛緩剤,血行促進剤などの薬物療法,各種温熱療法,頸椎牽引などの物理療法,頸椎固定用カラー装着,などである.その他,多くの治療法があるが,頸部の障害も,他の障害と同様に,治療を行うに際しては,整形外科的検査,神経学的検査ならびにリハビリテーション医学的評価は重要であり,これらから得た情報を基に,損傷の程度,その経過などにより,治療法を適宜選択しなければならない.
これらの保存的治療法の中で,適応があれば積極的にとり入れるべきものに,運動療法がある.この目的は,筋弛緩,血行改善,筋力増強ならびに筋耐久性の増強などが主なものである.これは頸肩腕症候群,胸郭出口症候群,頸部捻挫(頭部頸部症候群)などを主な対象として多くの方法が報告され,比較的陳旧期にある頸部障害の治療の一つとして広く行われるようになってきた.
しかし,この運動療法を経験した患者の評価は,一般に,必ずしも高いとはいえない.そのため,北九州市外電話局に勤務する女子電話交換手のうち,頸部痛を中心とした頸肩腕症候群様の愁訴を有する者52名を主な対象として,昭和49年より,運動療法を中心に検討を加え,一応の成績を得たので,現在までに調査し得たもののうち,筋弛緩,血行改善,筋力に焦点をしぼり,その有効性,手技による効果の差などを概説し,若干の考察を加えることとする.
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