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はじめに
頸肩腕症候群は頸部,肩甲部より上肢にかけての連鎖的な自覚症を主とした神経症状(脊髄,神経根,腕神経叢,末梢神経),ならびに後頸部症候群,レイノー症候群で代表される血管運動症候群などの各種の多彩な症状を呈する症候群であると一般に定義されている.
これには,広義のものと狭義のものがあるが,変形性頸椎症,胸廓出口症候群,末梢神経障害,筋結合織炎などの診断が確定可能な場合には,それぞれの原因に応じた疾患名と治療法が加えられるべきである.
しかし,発展した現代医療の診断法を駆使しても,明らかな局所的な病変の存在や原因の究明が困難な症例も多い.このようなものには,狭義には頸肩腕症候群という総括的な呼称が用いられている.しかし,この定義は衆目の一致したものではない.本稿では,この狭義の頸肩腕症候群の障害を対象として記すこととする.
この症候群は,障害部位も,頸部,肩部より手指にかけての身体的症状を呈するのみではなく,その多くは,自律神経障害を中心とした全身症状などもあり,問題が心理的にも波及している,しかも,いったん発症すると,比較的難治性であり,治療期間も長期にわたる症例が多い.これに対しては,薬物治療,物理療法,運動療法や心理的アプローチなどの心身両面からの治療を加えるが,治療に難渋する症例に遭遇することもしばしば経験することである.
また,薬物療法に関しては,鎮痛消炎剤,筋弛緩剤,精神安定剤なども適宜投与するが,副作用や薬害などを危惧して,処方しても服用しない者もかなりの数に認められた.この現象は,職業に起因して発症したとする患者群に顕著にみられた.
一方,これらの患者は,薬物でない保健食品には関心が高く,購入している頻度が高いと聞いたので,希望者には漢方治療を試みたところ,比較的良好の結果を得た.その結果より,適応があれば,その後も継続して日常の臨床に積極的に利用してきたので,その経験をもとにその概要を記すこととする.
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