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はじめに
周知のように,昭和54年度から障害児に対する義務教育制度が発足する.これに伴って,学齢期にある肢体不自由児は全員が肢体不自由児養護学狡(以下,単に養護学校とよぶ)に就学することとなるわけである.もっとも,軽度の肢体不自由児(以下,単に不自由児とよぶ)は普通の小・中学校に入学する者もあろうし,また重度の不自由児のうちのある者は就学猶予の取り扱いを受けるかも知れないが,ここではこうしたケースは除外して論ずることとする.
このように不自由児が押すな押すなで養護学校に入学するようになると(現在すでにその傾向が濃厚であるが),甚だ気掛りなことがある.それは医療との結び付きの問題である1).いまさら申すまでもないが,不自由児にとって教育が不可欠であると同時に医療も大切である.医療と教育は「車の両輪」のように,不自由児にとっていずれも欠くことのできないものとされている.
ところで,全員就学によって教育の面は強化され,不自由児の中で教育を受けられないケースはほとんどなくなるわけで,誠に結構なことであるが,医療の方はどういうことになるであろうか.
現在でも既にそうであるが,義務制の施行によって医療面がいっそう軽視されることになるのではないか,というのが筆者の最も憂慮するところである.というのは,学校というところは「教育活動」の場であって,そこに「医療」の入りこむ余地はほとんど全く無いからである.従って,学校に入学することは,同時に医療からの訣別を意味することにもなりかねないのである.
ただし,肢体不自由児施設に併設されている養護学校(いわゆる併設養護学校)に入る場合は別である.こうしたケ一スは肢体不自由児施設にある期間入院しているわけで,ここで医療・リハビリテーションを受ける傍ら,敷地内に併設された養護学校に通って教育を受けるので,医療と教育が両立するのである.私がここで問題としているのは,肢体不自由児施設と切り離して,単独で設けられている養護学校(いわゆる単独養護学校)の場合である.とくに,義務教育の実施を目前に控えて,このような単独養護学校が大幅に増設されつつあるが,そのことの是非はさておいて,単独養護学校(以下単に養護学校とよぶ)に就学しようとする(あるいはすでに就学している)不自由児にとって,医学的リハビリテーションはどのようになっているのか,また,今後どのようにあるべきか,について述べることとする.
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