The Japanese Journal of Physical Therapy and Occupational Therapy
Volume 18, Issue 10
(October 1984)
Japanese
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はじめに
障害児教育に於いて養護・訓練が実施に移されてから13年目になる.その間に統合教育の進展や養護学校義務制を契機として最重度・重複障害児の教育が大きな問題となってきている.リハビリテーション医療の世界から教育畑に移ってまだ4年目の若輩が何をか言わんやであるが,東京都下三摩に位置する本校も例外ではない.
養護・訓練(以下養訓と略す)は以下のような経過を経て設定されてきた.まず昭和7年に開設された光明学校(現都立光明養護学校)では「治療の時間」が設けられ治療体操,マッサージをその内容とした.
戦後1963年(昭和38年),1964年(39年)に実施された学習指導要領では肢体不自由養護学校に於いて小学部では「体育・機能訓練」,中学部では「保健体育・機能訓練」という一教科として位置づけられている.
1971年(昭和46年),学習指導要領が改訂され「機能訓練」は「養護・訓練」に衣がえして単一教科から各教科・道徳・特別活動と並ぶ特殊学校の教育活動の新領域となり,より重要な位置を占めるものとなった.
養訓ということばは「養護」(身体および精神の健康ないし自然の発達を保護・増進せしめるような教育作用の意)から「訓練」(「機能訓練」というときの「訓練」で障害の改善が主眼)に至る広がりをもった領域とされる.その目標は「児童または生徒の心身の障害の状態を改善し,または克服するために必要な知識・技能・態度および習慣を養い,もって心身の調和的発達の基盤を培う」と規定され内容は大きく,A.心身の適応,B.感覚機能の向上,C.運動機能の向上,D.意志の伝達から成っている.さらに1979年学習指導要領が再改定され養訓は肢体不自由だけではなく全障害種別を対象にするものとなった.
その実施にあたっては,①個々の児童・生徒に必要な内容を選び出し,個々に応じた指導法によること,②児童生徒の意欲的な活動を促すようなものにすること,③養訓の時間の指導は専門教諭が中心となって全教師の協力のもとに行われること,④必要に応じて医師等の専門家の助言を求め指導に生かしてゆくこと等が唱われている.(文部省告示第79号,養護学校(肢体不自由児教育)小学部,中学部指導要領参照)
授業時数は学習指導要領により,小中学部について年間105時間を標準とし,児童・生徒の実態に応じて適切に定めることができるとされその内容についてはかなり幅広い見方なり捕え方ができるようになっている.
したがってその障害により,養訓に対する位置づけも実際の適用の仕方も異なる場合がある.
本論では主に肢体不自由児教育の養訓の実践について述べる.ただ冒頭縷々養訓の歴史や定義について申し上げたのは非常に臨床的性格の強い重度・重複障害児の教育の検討が焦眉の急となっており,養訓が領域として位置づけられるようになったのもそのような背景があることを是非知って頂きたいからである.
多分筆者の知る限りでは,その障害の軽重にかかわらず,ひとつの学校で教育の機会を保障し発展させようという試みは世界的にもあまり例が無いのではないかと思う.おのおの異なるニードを持った寝たきりの子や多動の子が,同一空間で種々の訓練を受けている風景は,病院の治療場面の理解では不可解と思えるむきが無いわけでもない.筆者自身の第一印象が正にそうであった.
多分,治療効果と言う直線的な物指しが,教育効果という関数的な物指しに変わったことが大きく起因していると思うが,何はともあれ筆者のささやかな実践と幾つかの抱えている問題点を明らかにし,諸生の御批判を抑ぎたい.
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