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はじめに
周知のとおり,昭和54年度から養護学校の義務制が実施される.その中身は,保護者が子女(ここでは養護学校の対象児である精神薄弱児,肢体不自由児,病・虚弱児)を,養護学校に就学させる義務と,都道府県が養護学校を設置する義務との2つに分けられる.盲学校やろう学校は,昭和23年から学年進行ですでに義務制が実施されているが,ひとり養護学校だけが義務制の外におかれ,今日まで経過してきた.それが漸くにして実現の運びとなったのである.このことは,単に養護学校だけの問題ではなく,わが国の義務教育全体の上からもかなり画期的な出来事であることは間違いないところである.
ところで,養護学校の義務制という問題は内容的に他の校種の義務制とは比較にならないほど,多くの問題を内蔵している.すでに東京都は,昭和49年度から全国に先がけて希望者全員就学という,半ば義務制に近い就学体制を実施してきたが,その試行経験から見ても,完全な義務制が実施された暁には,相当に多くの問題や困難がなげかけられていることが予想される.
大都市や一部の進んだ県では,養護学校の整備状況が満足に近い線まで到達しているが,昭和52年度末で精神薄弱養護学校未設置の県すらも現実に存在しており,地域格差は相当な広がりを見せている.また,養護学校そのものへの理解が不十分,その他の理由から,その設置が著しく難渋・停帯していたり,さては養護学校そのものの存在を否定したりする動きも一部に見られるごとく,全員就学をめぐる環境には,いたって厳しいものがある.
1977年9月,リハビリテーション交流セミナーが東京で開かれ,全員就学の問題に関しても多くの関心が集められたが,本稿ではそれも踏まえてこの問題を考えてみたい.
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