論説
養護学校での理学療法―養護・訓練の技術として
工藤 俊輔
1
1東京都立府中養護学校
pp.53
発行日 1989年1月15日
Published Date 1989/1/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551102696
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養護学校へ養護・訓練(以下養訓と略す)の専門教諭として転出し8年目になる.転出を考えた理由は幾つかあるが現状の障害児教育の中で理学療法士が理学療法士の資格で制度的にかかわることができないことを目の当たりにし,外側からそのあれこれを批判するのではなく内側から考えてみたいという思いが強くあったからだ.養護学校は障害児の療育を考えるうえでのブラックボックスであると言われている.有名な成瀬・小池論争の中で感じていたことをその中で確かめてみたかった.
多少気負っていたかもしれない.今になってみるとお笑い草になるかもしれないが,当初は学校の中での理学療法の役割を明示するために随分と専門家ぶった話をしたり態度を示しだいぶ反発を買った.しかし障害児教育は1人だけの力ではできない.教育には教育目標というのがあり,その実現のために教育課程があるのだということに気が付いた.理学療法の技術のみでその教育目標をすべて実現することはできない.とすればいったいここで自分に何ができるか,いろいろ悩んだ末第一に考えたことは,子どもの合理的な介助法のくふうや道具のくふうであった.このことは直接子どもの教育にかかわることでないかもしれないが,見過ごされていることだと思った.車いす上での姿勢の変換のしかた,抱きかた,降ろしかたなど当初私が紹介した方法の幾つかが定着している.特に子どもの抱きかたなどを通じて脳性麻痺児についての理解を深めてもらうことは具体的で意味があった.ここで学んだことはすべて問題を具体的に説明できるかどうかが,異なる職種の中で仕事を理解してもらう重要なステップだということだった.
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