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はじめに
関東地方リハビリテーション医学懇話会の集まりでお話できることをたいへん光栄に思い深く感謝いたします.
私は10年前に旅行者として日本にきたことがございますが,今回は日本のいろいろな面により深く接することができて,はるかに有益であったと思います.日本とアメリカとの協力関係がこれを機会にますます深まることを希望したいと思います.
さて先ほど五味先生がお話しになっているときにちょっと上田先生に話したんですが,五味先生はまるで私の話のサクラをやって下さったような感じです.五味先生のお示しになった症例のなかで,生後4ヵ月には首がすわっていたが,5歳すぎにはかえって不安定になったというのがありましたが,いままでの神経学の常識からすればこんな現象はとてもうまく説明しきれないわけです.その他にもそのような症例がありました.このように一度獲得した機能がまた失われるということについては,普通なら,生まれたときに受けた脳の損傷に加えて,あとになってまた新たに何か損傷が加わったとでもしか説明のしようがないわけです.
もう1つ,痙性の脳性麻痺の例について,年をとるにつれて痙性が強くなっていくという現象がよく見られますが,それもまたどう説明したらよいでしょうか.現在一般的に考えられている運動系の機能的組織に関する説明では,これらの事実をうまく説明することができないと思います.
こういうような疑問から出発して,今日のお話のテーマを運動の協調(coordination)の発達ということにしぼりたいと思います.もう一つの理由はわれわれがリハビリテーションで行なっている運動訓練ということについても,運動の神経機構に関する従来の説明だけでは,十分な説明ができていないと思うからです.
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