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内容のポイント Q&A
Q1 ALSにおける手指の巧緻性障害とはどのようなものか?
ALSでは上位と下位の運動ニューロンが進行性に障害されるが,上位運動ニューロン障害によって痙縮,下位運動ニューロン障害により筋弛緩を認め筋力低下のみならず巧緻性障害をきたす.初期では食事や書字,進行期ではコミュニケーションに用いるパネルのタッチやクリック等にも支障をきたし,ALSの全病期を通じて生活の質に強く影響を及ぼす.
Q2 これまでにはこの手指の巧緻性障害に対してどのようなリハビリテーションが行われてきたか?
ALSでは過度な運動負荷が筋力低下の進行に関連するといわれているが,患者によって適切な運動負荷は変わることから均一化したリハビリテーションは難しい.手の機能をサポートするために個々に応じたさまざまな装具を用いることはあるものの,手指巧緻性の改善を目的としたリハビリテーションの報告はこれまではなかった.
Q3 手指の巧緻性障害に対するロボットリハビリテーションとはどのようなものか?
1・3・4指の先端にセンサーを有し,接触によって手指関節を屈曲させるアシストグローブを装着し,直径5 cm程度の円筒をつかみ30 cm移動させて放す単純動作を1日15分,計2週間行った.なお,今回用いたアシストグローブは装着しやすく,持ち運びも容易で既に複数の報告があり安全性も高いものである.
Q4 手指の巧緻性障害に対するロボットリハビリテーションの成果は?
ALS患者10人に2週間のリハビリテーションを行ったところ,簡易上肢機能検査と握力の改善,遂行度の満足度についての主観的改善を認めた.6名において安静時脳機能結合MRI(resting-state functional MRI;rs-f MRI)を行ったところ,リハビリテーション前後で左淡蒼球─右補足運動野間,右島皮質─右運動感覚間の機能的結合の増強がみられた.
Q5 手指の巧緻性障害に対するリハビリテーションの今後の課題は?
最も適したロボットリハビリテーションの動作・時間の最適化の余地がある.さらに在宅使用による継続効果の検討が必要と考える.他指の動作アシストや伸展機能を有するグローブによる効果向上も期待され取り組んでいきたい.またアシストグローブによる巧緻運動改善と脳機能結合の変化の機序についてもさらなる検討が必要である.
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