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人間の動きは,①運動(movement),②動作(motion),③行為(action)に分けられる.運動は姿勢の連続的変化でとらえるもので,運動分析で記録される.同様に動作は運動によりなされる具体的課題の遂行で,動作分析で記録され,行為は運動の結果のもつ社会文化的意味で,行為分析で記録される.リハビリテーションでは人間のもつ問題を,(a)impairment:個体の全体または部分の機能の欠陥により生じた正常からのずれ,(b)disability:同じ年齢,性,文化的背景をもった正常人と比較して,impairmentをもつ者が経験する制約,(c)handicap:impairmentまたはdisabilityのため,個人が知的・心理的・身体的・社会的・職業的・経済的な面でうける不利益,に分ける.このように行動と障害は多側面からの見方があり,おおよそ①―(a),②―(b),③―(c)の対応がある.患者の問題を3側面のいずれでとらえるかは,個々の場面で重要である.ところで,このような区分があるのは,身体の動きを何との関連で問題にしているかに起因している.それを理解するには①解剖学,生理学,生化学,②生理学,心理学(行動科学),③心理学,文化人類学,社会学などの知識が必要となる.もちろん行動そのものを記載する手段として運動学も不可欠である(入門書としては,中村隆一・斎藤宏著「基礎運動学」,医歯薬出版,1976がある).
今回のテーマは神経生理学であるが,これは「神経系の構造から機能を推論して,動物の行動と中枢神経系の細胞の形態・構造とを関連づける」ことを試みる学問である.現在のところ,神経系を部分に分けて分析的研究が多くされているが,動物全体の行動にどのような関連をもつかの統合は乏しい.最近では人間科学(human science),神経科学(neuroscience),脳研究(brain research)などのもとに種々の学問分野が学際的にこの問題をとりあつかっている.このような現状をふまえて,リハビリテーション関係者にとって,人間行動の理解・説明に必要な神経生理学とその関連領域のテキストを紹介する.
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