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肢体不自由児施設においては,脳性麻痺(以下CPと略す)の割り合いが増し,しかも重度化・幼児化してきているのが現況である.以前のCPの単独入園児は,ほとんどが小・中学生の年齢層で重度児は少なかった.そして拘縮・変形を起こしていて整形外科的手術の必要があることが多く,さらには装具療法の適応があった.また,筋力増強,関節運動可動域の増大を得るため,たとえば,尖足矯正のために,足関節背屈訓練として集団屈筋共同運動の利用,ブラッシングやアイシングによる背屈運動促進を行うなど,いわゆるファシリテーション・テクニックも使った.ブラシや氷を容易する手間の他に,こちらの指示を理解してくれることが必要であり,その点,学齢期のCP児では一応可能である.ただ,可動域が得られて筋力増強がみられても,それを維持するための訓練を続け,一方では夜間装具などをつけて再発を防御したり,さらには腱延長術,切腱術,腱移行術などの整形外科的手術が行われてきている.
しかし,母子入園,通園制度ができてくると,このような考え方をそのまま乳幼児のCPの訓練には適用できない.そこで正常の乳児が発達してゆく運動機能,すなわち,頭のすわり,ねがえり,お坐り,四つ這い,起立といった順序に発達を促すため,いろいろのファシリテーション・テクニックを使って来ている.たとえば,四つ這い位の時に肘が屈曲し手を握っていれば,上腕三頭筋部をたたいて肘を伸ばし,栂指・他指を外転・伸展して十分に手掌に体重をかけさせる訓練,あるいは両下肢を持って,はじめに早い動作で体を回旋し,リラクセーションして来たら,ある程度ゆっくりと体の回旋,さらに寝返りを促す,といったテクニックを用いたりする.このような方法は確かに訓練効果があり,正常化とまではゆかないが実用的な歩行,松葉杖歩行,上肢機能の獲得がみられている.
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