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はじめに
骨格・筋系あるいは末梢神経損傷等の整形外科的疾患を中心とする,いわゆる末梢性麻痺による機能障害は,その評価の方法も徒手筋力テスト,関節可動域テスト,日常生活動作テストなどがあり,障害評価も正確におこなうことができる.その障害評価の結果にもとづいて,それに対処する治療方法も簡単に決定することができる.筋力テストの結果,筋力低下があればその筋力を量的に増大するための筋力増強訓練をおこなえばよいし,また関節可動域に問題があれば,関節可動域の維持訓練とか改善訓練をおこなうことによって治療をおこなうことができる.つまり筋力とか関節可動域という生物学的あるいは医学的レベルの機能障害を改善することによって,全体としての機能改善を大幅にはかることが可能であった.
しかしながら,中枢神経系の損傷によって生じる中枢性麻痺に対しては,従来のテスト法によっては満足する評価は得られない.また治療も末梢性麻痺の場合のようにはうまくゆかないし,筋力増強訓練による方法は中枢性麻痺に対しては痙性,共同運動,あるいは緊張性姿勢反射等のいろいろな要素のために効果的ではなかった.中枢性麻痺に対処するには従来の方法では不十分であった.
そのような背景のもとに,先駆者的なPT達によって脳性麻痺・片麻痺に対するアプローチがいろいろと開発されてきたのである.そのアプローチの方法はいずれも神経生理学の諸法則を利用しておこなうもので,筋・神経系に知覚入力(sensory in-put),運動出力(motor out-put)によるいろいろなタイブの刺激をあたえ,促通(facilitation)や抑制(inhibition)することによって,知覚と運動の統合による運動調節機構の統合(motor integration)の回復をはかるものである.
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