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序にかえて
生体にとって筋肉がきわめて重大な役割を果していることはいうまでもないが,その生理,生化学などについて把握されたのはそんなに古いことではないばかりか,まだ不明の部分もかなり多い.それゆえ,いろいろな教科書や文献をみても理解しにくい点が多いのが現状である.
著者大井博士は江橋教授の下で筋肉についても深く研鑽された臨床医で,筋肉というものをあらゆる面から,殊に臨床医の眼で深くとらえ,在来のどの紹介や教科書的記述よりも,はるかに広くかつそれをわかりやすく解説している.筋肉についてこれだけのことを理解していれば,少なくとも現時点においては,まず充分であろう.
医師,医学生がこの全体を理解しなければならないのは勿論であるが,この雑誌の対象者の一部であるPT,OTは,この全体を詳しく体得する必要はないにしても,その概要は理解した上で患者に接しなければ正しい医療は行なえないであろう.
改めて大井博士の研究と,これを理解させんとする努力に対し深甚の敬意を表するとともに,読者がこれを活用されんことを希望するものである.
御巫 清允
【抄録】 これより数回にわたり筋肉についてわかりやすく書いてみることになった.著者自身は筋肉の研究者というにはあまりにも恥しい一臨床医に過ぎないが,1964年以来時々疎遠になることはあるけれども,筋肉というものを多少くわしく見つめる機会を得て来た.特に筋肉の収縮蛋白系の研究は日本の優れた研究者の業績に負うところがきわめて大きい.著者の大学院学生時代以来のこの方面の師はいわゆる“筋肉の江橋”,江橋節郎先生であった.著者がまったくの無知であった時点から,いまだ貧弱であるとはいえ,現在何とか筋収縮弛緩のメカニズムについて理解出来るように引き上げて下さったのである.リハビリテーション医学を学ぶものの一つの大きな命題として,筋肉に関する諸問題は当然とり上げられる.それで紹介という意味もあり,また生化学的解説が主になるかもしれないが,他の分野との関連において収縮弛緩をとられることを出来るだけ試みたつもりである.なお読者対象は医師のみならず理学療法士,作業療法士なども含んでいるが,多少難解な点があれば著者の不勉強の故であるから御了承願いたい.
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