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特集 視覚障害者のリハビリテーション
視覚障害者の教育保障と学習支援
Right to receive education and teaching methods for individuals with visual impairments.
佐島 毅
1
Tsuyoshi Sashima
1
1筑波大学人間系(障害科学域)
1Faculty of Human Sciences(Division of Disability Sciences), University of Tsukuba
キーワード:
低発生頻度障害
,
教育保障
,
インクルージョン
,
センター・ブランチシステム
Keyword:
低発生頻度障害
,
教育保障
,
インクルージョン
,
センター・ブランチシステム
pp.1185-1192
発行日 2012年9月10日
Published Date 2012/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552102656
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はじめに
障害児教育の制度は,「障害の程度等に応じ特別の場で指導を行う『特殊教育』から障害のある児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じて適切な教育的支援を行う『特別支援教育』への転換を図る」ことを理念として,2007年4月より特別支援教育制度へと転換が図られた1).その要点は,「対象の拡大」と「制度の弾力化」に集約され,主に発達障害者の潜在的ニーズを制度的に明示した点は大きな前進であったと言えよう.
一方,視覚障害児は0.01%,1万人に1~2人という「低発生頻度障害」であり,対象の拡大と制度の弾力化という特別支援教育制度への転換は,必ずしも視覚障害児童生徒の教育ニーズの充実に繋がっていない面がある.すなわち,一人一人の教育的ニーズに応じるという特別支援教育の理念に基づく制度設計の変更が,低発生頻度障害としての視覚障害教育において,明治以来,特別なニーズに応じるべく先達の築き上げてきた視覚障害教育の基盤や専門性基盤を揺るがしている.
本稿では,低発生頻度障害としての視覚障害教育の現状を分析したうえで,このパラドックスをいくつかの観点から読み解きながら,特別支援教育への移行から現在までの視覚障害教育における新しい動向や課題について論考し,視覚障害者の教育保障の本質と学習支援の方向性を示したい.また,視覚障害教育がこの数年直面してきたパラドックスは,すべての障害のある人の教育と支援における本質的課題であり,その課題の共有につなげたい.
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