巻頭言
リハビリテーションと効率化
金谷 さとみ
1
1菅間記念病院在宅総合ケアセンター
pp.419
発行日 2011年5月10日
Published Date 2011/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552102057
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私が勤務している菅間記念病院は,別荘地で有名な栃木県那須にある.別荘地には,退職後に都会から転居してくる夫婦が多く,豊かな自然のなかで快適に暮らしている.しかし,夫婦のいずれかが要介護となればきわめて深刻な状態となる.別荘は深い森のなかで,しかも距離を隔てて家が建っているためである.現在,日本の世帯形態をみると,世帯主が65歳以上の世帯のうち,その63.7%が一人暮らしまたは夫婦2人の世帯である.家族不在の在宅支援と過疎地域の効率の悪いサービス提供は,この地域のみならず全国的な問題であろう.ところが,ケアマネジャーが言うには,鍵となるのは家族の有無ではなく,本人や家族の「介護」に対する理解が最も大切だという.天涯孤独でも,経済的問題が大きくても,劣悪な環境でも,それを変えていくことの必要性を理解し協力してもらえなければ,多くの時間が無駄になる.
複雑な状態の要介護高齢者が多いため,総合医が重要視され,リハビリテーションにおいては理学療法士,作業療法士,言語聴覚士の役割や専門性が不明瞭になっている.また,このような状況のなかで効率化(費用削減)を図る政策が推し進められている.医療における包括診療報酬,医療・介護施設の機能分化などである.多くの疾患をもち,状態が変わりやすい高齢者が多いにもかかわらず,国の方向性と現実に隙間があると感じる時がある.介護施設入所者が治療のために幾度となく入院し,患者はそのたびに移送車で施設間を移動する.本人はかえって効率が悪いと感じるかもしれない.
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