Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
『ミロとの対話』―不遇なるがゆえの創作
高橋 正雄
1
1筑波大学障害科学系
pp.496
発行日 2010年5月10日
Published Date 2010/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552101776
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1977年に発表された『ミロとの対話』(朝吹由紀子訳,美術公論社)は,1975年の11月から12月にかけて行われた現代抽象絵画の巨匠ミロ(1893~1983)とパリ大学のライヤール教授との対談を記録したものであるが,ここでのミロの発言をみると,彼の人生は一見マイナスにみえるものをプラスに変えながら生きた人生だったことがわかる.
この対談で,まずミロは自らの生い立ちに触れて,「私は皆にバカにされていました.とても孤立していたのです」,「両親とはまったく断絶していました」と語る.幼いころから絵を描くことが「物理的な欲求」だったと言うミロは,両親からも理解されぬまま孤独で惨めな幼年期を送っていたというのである.
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