Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
ヴァージニア・ウルフの『過去のスケッチ』―創作による解放
高橋 正雄
1
1筑波大学人間系
pp.904
発行日 2014年9月10日
Published Date 2014/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552110636
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1939年から1940年にかけた書かれたヴァージニア・ウルフ(1882~1941)の最晩年の回想記『過去のスケッチ』(出淵敬子,他訳,『存在の瞬間』所収,みすず書房)には,ウルフが13歳の時に亡くなった母親が,その後も長く彼女の人生を支配しつづけた様子が描かれている.
ウルフは自分にとって母親がいかに大きな存在であったかについて,「子供時代というあの大いなる大寺院の空間のまん中に,確かに母はいた」と語る.美貌で活動的だったウルフの母親は,「私の子供時代の中心で非常に陽気に回っている,あの混雑した楽しい世界の創り手」であり,楽しく忙しい人々で混み合う家族全体の生活の中心だったと言う.
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