Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
アイスキュロスの『アガメムノン』―古代ギリシアの「障害受容」
高橋 正雄
1
1筑波大学心身障害学系
pp.590
発行日 2003年6月10日
Published Date 2003/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552100789
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紀元前458年に発表されたアイスキュロス最晩年の作『アガメムノン』(呉茂一訳,筑摩書房)には,ある意味で弱者に厳しい過酷な競争社会だった古代ギリシアにおける「障害受容」的な論理を認めることができる.
その第一は,『アガメムノン』の冒頭で,アルゴスの長老たちが,「苦労した者だけに,わきまえは授けられる」と,人生において苦悩が果たす積極的な役割を強調する場面である.「悩みによって学ぶことこそ,この世の掟と定め給うて,人間を思い慮りに導いた御神なれば」,「悩みこそ,血をしたたらせ,望まぬとてもおのずから,慮りをもたらすもの.たぶんは尊い舵をお取りの神の,力ずくでの情けであろう」など,アルゴスの長老たちは,苦悩は人間を思慮深くするために神によって与えられた賜物であると述べるのである.
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