Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
アリストテレスの『政治学』―古代ギリシアの差別思想
高橋 正雄
1
1筑波大学心身障害学系
pp.591
発行日 1999年6月10日
Published Date 1999/6/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552109000
- 有料閲覧
- 文献概要
紀元前4世紀に書かれたアリストテレスの『政治学』(山本光雄訳,岩波文庫)は,ポリスを対象とした一種の国家論であるが,そこではさまざまなレベルでの差別的な思想が公然と語られている.
例えば,第1巻の第5章では,奴隷制度をめぐって,「支配することと支配されることとはただ必然なことに属するばかりでなく,また有用なことにも属する」とか,「生まれる早々から或る場合には相違があって,或るものは支配されるように出来ており,また或るものは支配するように出来ている」と,人間は生来,支配する者とされる者が区別されていて,支配されるように生まれついた者は,奴隷として生きることが,むしろ幸福なのだという議論が展開される.「他の人々に比べて,肉体が魂に,また動物が人間に劣るのと同じほど劣る人々(中略)は誰でも皆自然によって奴隷であって,その人々にとっては(中略)そのような支配を受けることの方が善いことなのである」.
Copyright © 1999, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.