Japanese
English
診察術の歴史・3
古代インドにおける診断学
The Caraka Samhita and The Sushruta Samhita
James K.Gude
1,2
,
吉原 幸治郎
1
1佐賀医科大学総合診療部
2University of California-San Francisco
pp.253
発行日 1992年3月15日
Published Date 1992/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1414900387
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- Abstract 文献概要
Caraka SamhitaとSushruta Samhitaはサンスクリット語で記載された古代インドにおける医学書である.Caraka Samhita1)は紀元2世紀頃,古書の中より発見された内科書であり,Sushruta Samhita2)は紀元5世紀頃に書かれた外科書とされているが詳細については不明な点が多い.これらの書物の中には古代インドの医師が人間の五感を駆使して患者を診察していたことが記載されている.Sushruta Samhitaには「医師は病室へ入ったならば,患者の体をよく観察し,自らの手で触り,患者の訴えに耳を傾けなければならない」,「医師はまず病気の診断を行い,次にその観察の上に立って治療をしなければならない.もし診断なしに治療を行えば,たとえ最良な治療者であっても成功するのは時の運である」と記載されている.これらは古代インドにおける医師の基本的な診療姿勢を表現しており,非常に興味深い.
古代インドの医師にとって詳細な観察は最も重要な診察術であった.Caraka Samhitaには「舌苔を伴い,腫れあがったり,黒く動きの鈍い舌をもつ患者は死が近づいている.また呼吸をするたびに鼻からガラガラと音を立てるのは予後不良な徴候である」という記述がある。これは死亡前の舌の変化や死前喘鳴ついての記載である.さらに患者の体位に関して「賢明な医師は患者が立ち上がろうとするたびに気を失うようならば治療を中止すべきである」と述べられている.
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