Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
古代エジプトの『宰相プタハヘテプの教訓』―傾聴することの意味
高橋 正雄
1
1筑波大学心身障害学系
pp.184
発行日 2002年2月10日
Published Date 2002/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552109695
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紀元前27世紀に始まるエジプト古王国時代には数多くの教訓文学が書かれていて,古代エジプト人の生き方や考え方を知るうえで貴重な資料になっているが,前25世紀頃つくられた最古の教訓文学の一つ『宰相プタハヘテプの教訓』(尾形禎亮訳,『古代オリエント集』,筑摩書房)では,請願者に対する官吏の心得が次のように説かれている.「汝,請願をうける人であるならば,請願者の言葉に穏やかに耳を傾けよ.かれがその体をきれいにするまで,あるいは赴いた用件を話してしまうまで,追い出してはならぬ.請願者は,用向きの件が成就するよりは,自分の言葉が傾聴されることを好むものなり」.そしてそのうえで,「話すことは心のよき慰めな(ればな)り」,「かれの請願が完全に実現される(必要は)ない.よく耳を傾けてやるは,心慰めることなり」と,人情の機微をついた実践的な忠告がなされるのである.
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