Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
はじめに
脳卒中片麻痺患者における下腿三頭筋群の痙縮は尖足などの異常肢位を引き起こし,立位歩行の獲得の大きな阻害因子となる.また,著明な関節拘縮や変形をきたした症例ではその治療に難渋する場合が少なくない.
痙縮は上位運動ニューロン症候の一つで,筋緊張亢進,深部腱反射亢進,クローヌスを伴い,筋の伸張の速度に比例して抵抗が強くなる速度依存性(相動性伸張反射)の亢進が特徴とされる.このメカニズムについては,γ運動ニューロンの機能亢進,筋紡錘受容器の感受性上昇,Ⅰa群線維終末に対するシナプス前抑制の減少,Ⅰa群線維の発芽現象,シナプス後膜の感受性増大1)など,複数のメカニズムが関与していると考えられ,未だ不明な点が多い.
痙縮に対する理学療法としては,関節可動域訓練を基本に電気刺激療法や温熱療法,装具療法などの複数の治療を併用していることが多い.なかでも持続伸張(prolonged stretch;PS)は古くから治療手技の一つとして用いられたきた.しかし,PSは筋の伸張痛を伴うため,かえって全身的な筋緊張が増悪する症例も少なからず経験する.そこでわれわれは,できるかぎり筋の伸張痛を伴わずPSと同様の効果が期待できる手技として,筋を繰り返し伸張し最大可動域での伸張が可能な連続的他動運動(continuous passive motion;CPM)に着目し報告してきた2-6).しかし,PSとCPMの妥当性のある比較は不十分であった.
そこで今回われわれは,足関節の他動的底背屈運動を自由に設定できる治療装置(足関節用CPM,安川電機社製)を用い,PSとCPMが痙縮などに及ぼす影響について比較検討を行ったので報告する.
Copyright © 2004, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.