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はじめに
リハビリテーションの臨床において,痙性麻痺患者の足関節可動域訓練を行う際,個々の患者によっていわゆる“硬さ”の違いがあることを経験する.この“硬さ”は筋緊張亢進の状態と考えられるが,Dietzら1-3)はその成因を,関節の他動運動によって生じる伸張反射由来の抵抗と,関節を構成する組織の粘弾性によって生じる抵抗とに分類することができるとしている.筋の収縮要素に含まれる前者を反射性要素による抵抗,後者を非反射性要素による抵抗と定義している.したがって,いわゆる“硬さ”は反射性要素による抵抗と,非反射性要素による抵抗の和であると言える.
しかし,臨床でわれわれが診ている“硬さ”は,徒手的評価として主観的に筋の粘性や質を評価していると考えられ,どちらの関与が大きいのか明確ではない.そのため,物理療法(寒冷または温熱療法など),関節可動域訓練(持続伸張,他動的連続運動など),電気刺激,バイオフィードバック,スプリントやキャスティング,薬物療法(抗痙縮薬の投与など),神経ブロックなどのいわゆる痙縮のリハビリテーション治療の効果判定が困難であることは臨床において多く経験するところである.
反射性要素・非反射性要素を区別することは,痙縮に対するリハビリテーションアプローチの効果判定に有用であると考える.また,反射性要素・非反射性要素を区別することが可能であれば,いわゆる“硬さ”を構成する各成分に対して,適切なアプローチを選択することができると考える.すなわち,いわゆる“硬さ”が,痙縮などによる筋の過活動によるものなのか,運動麻痺に伴う不動の結果生じた筋の粘弾性の変化や拘縮などによるものなのか,あるいは両者の要因が混在しているものであるのかを見極めることが可能となる.したがって,神経性の要素と非神経性の要素を分けて,治療すべき問題を明確にし,各要素の“硬さ”への関与の割合を判断することができると考える4).
つまり,反射性要素と非反射性要素を区別する意義は,いわゆる“硬さ”に対するリハビリテーションアプローチの効果判定に利用できること,および適切なアプローチの選択に有用であることの2点である.
そこで今回われわれは,反射性要素・非反射性要素を区別するために,異なる角速度で他動運動を行った際の足関節底屈筋群のトルク変化を計測し,比較検討を行った.結果として,興味深い知見が得られたので,若干の考察を加え報告する.
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