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はじめに
骨折や靱帯損傷などの整形外科疾患や火傷などの形成外科疾患によって生じる関節機能の障害は,直接的に損傷を受けた関節だけではなく,不動や疼痛などによって他の関節にも波及し,さらなる能力低下の原因となる.そのため,理学療法では関節可動域(range of motion;ROM)制限の改善を目的として,早期から多関節にわたるアプローチが重要となる.一般的にROM制限には,筋腱の短縮・線維化・癒着,関節面の損傷による運動障害,皮膚の瘢痕,疼痛など多くの因子が関与している.特に整形外科疾患や形成外科疾患では,それらの因子が重複して存在している.そのため,ROM制限を有する関節に対しては,各制限因子および各関節の持つ運動特性を考慮した治療を頻回にわたり行う必要がある.すなわち,運動の質・量をともに考慮したアプローチが特に重要となる.
今まで整形外科疾患や形成外科疾患患者のROM運動に対しては,手術直後から連続的他動運動装置(continuous passive motion;CPM)が広く用いられてきた.しかしCPMの軌道は各関節の持つ生理学的な運動に一致せず,一定の股・膝関節同時屈曲伸展運動しか行えないなど,さまざまな欠点が指摘されている1).
そこでわれわれは,新しい連続的他動運動装置であるtherapeutic exercise machine(慶應義塾大学月が瀬リハビリテーションセンターにて開発,2001年12月認可.以下,TEM)2)を使用し,さまざまな整形外科疾患や形成外科疾患患者のROM改善に対する有用性を検討している.TEMは従来のCPMと異なる治療コンセプトで発展させた装置で,治療者による他動運動の軌道を記憶し,その運動パターンを任意の速度で再現できる装置である.
現在までにTEMを用いた治療効果およびその有用性に関しては,内田ら3,4)や瀧ら5)によって脳血管障害患者の筋緊張抑制の効果が報告されている.しかし,整形外科疾患や形成外科疾患患者に対するROM改善効果についての報告はない.今回われわれは,下肢整形外科疾患患者,および下肢形成外科疾患患者に対してTEMを使用し,膝関節ROMの短期変化と筋電図変化,および運動中の抵抗感を示す膝関節トルクの変化を分析することで,その即時的ROM変化の要因について検討したので報告する.
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