Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
心臓病と脳卒中は日本人の死因の2位と3位を占めている.これらの病気は動脈硬化が原因と考えられるが,その動脈硬化の危険因子として,メタボリックシンドロームという言葉が最近とりざたされている.メタボリックシンドロームの要因としては内臓脂肪が注目されており1),松澤2)は,糖尿病,高血圧,高脂血症に内臓脂肪の蓄積が加わることにより動脈硬化性疾患が引き起こされると報告している.そのため,最近の予防医学分野においては,運動が四肢の脂肪減少,内臓脂肪減少に及ぼす効果についてさまざまな報告がなされ,注目されている3-5).またリハビリテーション医学分野においては,脂肪量だけでなく筋量や骨量についても評価指標として臨床や研究で用いられている.筋量は効果的な筋力増強が図られているか否かの指標として,また麻痺や廃用が認められる部位における筋萎縮の程度の指標として用いられ,骨量は骨折予防の観点から骨密度に対応する指標として用いられている.
これらの指標の測定にはさまざまな方法が用いられるが,筋量および脂肪量の評価には,一般的にCT像の断面積が用いられている6-8).CTはX線吸収分布からコンピュータを用いて横断面を画像化するものであり,X線透過度の違いによって生じる明度差から筋および脂肪の断面積を別々に測定することができる.一方,骨量の評価には二重X線吸収法(Dual Energy X-ray Absorptiometry;DEXA法)が用いられている9).DEXA法は異なるエネルギーをもつ2種類のX線を照射し,その吸収率の差から骨量を測定する手法である.しかし,これらの方法は装置が大掛かりであり,簡便に測定に用いることができない.また,高額な測定費用と被曝の観点から,同じ対象者を経時的に評価することが困難である10-12).
そこで,生体電気インピーダンス法(Bio-electrical Impedance Analysis;BI法)を用いた体組成計が注目され始めている13-15).BI法は,生体に微弱な交流電流を流した際のインピーダンス値(交流電流に対する抵抗)が組織ごとに異なるという特徴を利用して体組成を推定する.BI法を用いた装置は小型で安価であり,使用方法も簡便であるため,筋量,脂肪量,骨量の評価装置としてスポーツクラブ等に導入されたり,家庭用として販売されたりしている.しかし,CTおよびDEXA法と同程度の結果が得られれば有用であるものの,その精度については十分に検討されていない.
本研究では,同一被験者に対してCT,DEXA法,BI法による筋量,脂肪量,骨量の測定を行い,BI法を用いた簡便な測定装置の妥当性について検討を行った.
Copyright © 2006, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.