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はじめに
脳卒中は他の疾患群と比べ,その病態,患者群の多様性から,帰結の評価,予測が困難であり,これまでにさまざまな評価尺度が開発され,正確な予測のための試行錯誤が繰り返されてきた.本稿ではこれまでの脳卒中リハビリテーションにおける帰結研究の流れを踏まえたうえで,最近の帰結研究の動向をレビューする.
これまでの帰結研究の流れ
1.ADL(activities of daily living)の帰結を左右する因子の解明
帰結に関する研究の目的の一つは,脳卒中における機能的帰結を規定する因子(予後因子)が何であるかを明らかにすることである.
Jongbloed1)は,1980年代半ばまでの文献をレビューし,入院時ADL,年齢,過去の脳卒中の既往,失便失禁,視覚,空間認識をADLに影響を及ぼすことが明確である因子として挙げている.しかし,各因子におけるADLとの相関の有無は文献によって必ずしも一致しておらず,調査対象となった患者集団に差があること,評価項目や方法が各研究間で統一されていないことなどをその要因として挙げ,信頼性,妥当性の検証されている評価尺度を用いることの必要性を指摘した.
このような経緯を時代的背景としてFIM(Functional Independence Measure)をはじめとした評価尺度が開発され今日に至っているが,1990年代後半には帰結研究における内的妥当性,外的妥当性が一層厳しく問題とされるようになった.EBM(evidence-based medicine)の概念を踏まえたKwakkelら2)のレビューでは,年齢,脳卒中の既往,失禁,発症時の意識障害,見当識障害,麻痺の重傷度,座位バランス,入院時ADL,社会的サポート,梗塞領域外の糖代謝レベルが退院時ADLに影響を与える因子として十分な根拠があったとしている.また,Cifuら3)のレビューによれば,Ottenbacherら4)のメタアナリシスなどをもとに,発症からリハビリテーションの開始までの期間は退院時ADLと強い相関があると結論づけている.
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