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はじめに
横浜市立脳血管医療センター(300床)は,横浜市南部を診療圏(人口約100万人)とした脳卒中高度専門病院である.24時間365日応需の脳卒中救急外来をもち,ICU・急性期病棟(Stroke Care Unit)と安定期病棟(Stroke Unit)からなり,段階的患者管理方式(Progressive Patient Care;PPC)による病床管理を行っている.入院医療の期間を超急性期医療から家庭復帰までの約3か月間と設定し,急性期からの途切れることのない一貫したリハビリテーション医療を実施することを医療理念としている.複数担当医(主治医とリハビリテーション科医師),理学療法士,作業療法士,言語聴覚士,心理士,看護師,医療ソーシャルワーカーなどのチーム医療を行っている.
救急入院の24時間以内にリハビリテーション科医師が初診時評価とリハビリテーション処方を行い,関節可動域(ROM)訓練や座位耐性訓練を主プログラムとした基本的リハビリテーションを開始する.急性期のベッドサイドから,適応のある全ての症例に急性期リハビリテーションとして1日40分間(週5日)の個別理学療法(以下,PT)と個別作業療法(以下,OT)を実施し,早期からの機能回復と早期離床をはかる.亜急性期(発症から2~3週後)には機能訓練室へ移行し,約4週後からは安定期リハビリテーションとして機能回復とともに能力向上をはかる.このように,救急入院から3か月以内に地域生活へ復帰することを目標としたリハビリテーション・プロトコールを実施してきた(図).
なお,看護師はStroke Unitの主要な専門職であり,安静度(活動度)の指示に応じた看護ケアのなかでactivities of daily living(ADL)訓練(援助)を実施している.看護師によるADL訓練は,リハビリテーション専門職によって獲得されたADL能力を病棟で定着させるための訓練(援助)であるから,これをリハビリテーション・プロトコールのなかには組み込まなかった.
これまで,日本の脳卒中リハビリテーションの帰結報告については,二木1)による大規模層別化報告があるが,その後の20年間にわたって,大規模調査はほとんどない.日本リハビリテーション医学会2,3)による急性期リハビリテーションおよび慢性期リハビリテーションの多施設実態調査は,急性期からの一貫したリハビリテーション医療によるものではないため,脳卒中に対する急性期からの一貫したリハビリテーションの効果と帰結を判断するには不十分である.
二木1)は,脳卒中の最終的自立度予測の基準となる因子を明らかにした.それらは,入院から1か月以内の基本的ADL,60歳以上,意識障害(JCS:2~3桁),重度下肢麻痺,中重度痴呆,高度心疾患である.したがって,脳卒中リハビリテーションによる帰結(アウトカム)研究においては,できるだけこれらの因子により層別化して分析することが必要である.
今回,われわれは,横浜市立脳血管医療センターの大規模連続症例を分析し,高齢者(便宜上,65歳以上)と診断病名で層別化し,機能障害などの帰結を明らかにすることができた.今後の脳卒中リハビリテーションにとって有用な基礎データを得ることができたので,これらのデータを「調査」として報告する.
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