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はじめに
近年,人間の知的情報処理機能をコンピュータで実現しようという試みが盛んである.その手法として,洗濯機の宣伝にまで登場しているファジー理論1)や,人工知能2)などとともに,生体のニューロンの構造や可塑性を模したニューラルネット3)が知られている.
ニューラルネットは生体のシナプスの情報伝達法をコンピュータで計算できるように単純化したモデルである.図1のように入力層,中間層,出力層というモデルを仮定し,既存のデータ群をそのモデルに繰り返し与えることにより,各層間のつながりの強さを算出し,より適切な値に変化させていくものである.医学におけるニューラルネットの応用は,蛋白質の構造決定4)などより始まり,各種診断,例えば肺気腫5)や血管炎6),さらには救急病棟の入院期間予測7)にまで及んでいる.
リハビリテーション分野におけるニューラルネットの応用例としては,認識・認知機構解析8),歩行制御9),動作モデルとしての利用10),環境制御装置の音声認識11)などがある.しかしニューラルネットは制御のみに有用なのではなく,予測アルゴリズムとして価値が高い.ニューラルネットは入力層に用いる変数が順序尺度でも構わず,また入力変数同士の相関が高くても問題が起こりにくいという特性を持つ12,13).リハビリテーションにおいて扱う変数は麻痺の程度など順序尺度である場合が多いため,非線形処理のできるニューラルネットを用いることにより,精度の高い予測が行える可能性がある.
われわれの知る範囲では,ニューラルネットをリハビリテーションの帰結予測に応用した報告はわずかである14),そこで今回,脳卒中患者の帰結予測研究にニューラルネットを適用し,その有用性を検証した.
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