Japanese
English
研究と報告
呼称障害と意味セラピー―1失語例における訓練効果研究
Naming disorders and semantic therapy in a case of aphasia.
中村 光
1
,
波多野 和夫
2
Hikaru Nakamura
1
,
Kazuo Hadano
2
1岡山県立大学保健福祉学部保健福祉学科
2滋賀県立精神保健総合センター
1Department of Welfare System and Health Science, Okayama Prefectural University
2Shiga Mental Health Center
キーワード:
失語症
,
呼称障害
,
意味セラピー
,
odd word out課題
Keyword:
失語症
,
呼称障害
,
意味セラピー
,
odd word out課題
pp.1149-1154
発行日 2005年12月10日
Published Date 2005/12/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552100233
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はじめに
呼称障害は失語の中核症状である.その呼称障害に対する言語訓練として,伝統的な刺激法1)では復唱を利用した訓練を行う.一方近年,欧米の研究者は,呼称障害に対する別のアプローチを提唱している.具体的には,音声単語または文字単語と絵カードのマッチング課題,音声または文字で与えられた定義文と絵カードのマッチング課題,絵カードや単語カードの意味的な分類課題などを行って,患者の「意味システム」2,3)に働きかけたり,または意味と語彙の対応の強化によって呼称障害の改善を目指すものである.このような訓練法は,音韻セラピー(phonological therapy)と対比して意味セラピー(semantic therapy)または語彙・意味セラピー(lexical-semantic therapy)と称される.
意味セラピーの研究は,1985年のHowardら4,5)のものから始まり,欧米ではその後も多くの研究が行われて,有効性が確かめられている.ただし,訓練効果のメカニズムやどのような患者に適応があるかなどについては,いまだに不明なことも多く,現在も探求が続けられている(以上,詳細は文献6-9)).一方わが国においては,意味セラピーは一般的な訓練法として認識されておらず,調べた限りでは意味セラピーについてのまとまった報告はない.
今回われわれは,失語1例にodd word out課題を用いた意味セラピーを施行し,その有効性を確認した.本邦で初めての意味セラピー研究であり,貴重な知見を得たので以下に報告する.
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