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はじめに
装具は,固定・免荷,変形の予防・矯正,機能的補助を目的にさまざまな疾患に対して用いられている.特に下肢装具は,脳卒中などの麻痺性疾患において機能的補助の目的で用いられることが多く,その有効性に関しては脳卒中治療ガイドライン1)に記載されている.脳卒中の装具療法は機能回復が見込めなくなってから始めるのではなく,「早期処方・早期装着,そしてよりよいコストパフォーマンスへの対応が求められている」2).
脳卒中では生じ得る障害が多様なうえ,急性期から回復期にかけて大きく変化する.このため,下肢装具の選択のみならず,回復過程における下肢装具の変更や設定調整についても日々,臨床のなかで判断することが理学療法士に求められる.一方,短下肢装具を中心に近年,さまざまな下肢装具が開発されており,機能性に富んだものも多い.選択肢が増えたことは喜ぶべきことだが,その分,下肢装具の選択と機能設定調整に際して多くの知識が必要となり,難渋することも少なくない.
下肢装具を選択する際には麻痺や筋緊張の程度,変形の有無,感覚障害の程度,体格,使用場所,立位や歩行能力などさまざまな視点から複合的に検討し判断する必要がある.装具療法を進めるうえで特にポイントとなるものの1つが立位,歩行能力である.
ヒトの一側下肢の自由度は股関節3,膝関節1,足部3の合計7自由度をもつ.脳卒中により随意性が低下した患者は,麻痺側下肢の7自由度をコントロールすることが困難となり,立てない,歩けないなどの能力低下を呈する.そこで,麻痺肢に下肢装具を用いて非麻痺側を含めた残存機能でコントロール可能な自由度に制約し,運動を単純化する必要がある.脳卒中の理学療法における下肢装具の効用はさまざまあるが,重要なものの1つが自由度制約であると考える.ここでは自由度制約の観点から脳卒中の装具療法について考えたい.
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