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はじめに
脳卒中患者の下肢機能の徹底改善において歩行訓練は有効な手段であり,急性期から生活期に至るまで回数を重ねる必要があり,装具療法はその中で麻痺特有の下肢変形の予防,矯正だけでなく,歩行の自立度,速度,耐久性,歩容の向上などさまざまな目標の達成に役立つ治療である.
初発の脳卒中(テント上病変)による片麻痺患者のうち,リハビリテーション治療を受けることで約7割が修正自立以上の歩行を獲得し,その1/3が装具を使用する1).歩行可能な患者の約7割が歩行速度の低下のため道路の横断などの屋外移動に支障を来している2).
装具療法の特徴の一つは,現在の問題点から,少し先の病態を予測し,病院内の試着用装具を利用し,必要な装具の適応を考え処方し,フォローアップを行うという点にある.すなわち,生活の中で装具療法の位置づけを明確化し装具を自己管理させ,心身機能や歩行能力の変化に合わせた適切な装具をメンテナンスしつつチーム全体で検討し続けることである.心身機能が低下すると,歩行自立度が低下し,歩行訓練の患者負担・安全の確保・療法士の負担が問題となる.その際,装具に加え歩行補助具を選択し必要な介助を行う.歩行自立度が向上すれば,歩行速度,耐久性の向上を目標とし次の歩容のゴールを予測する.
病院機能分化(急性期/回復期/かかりつけ医),リハビリテーション治療(医療保険/介護保険),装具の支給制度(医療保険/障害者総合支援法)の違いのもと,適切なタイミングでそれぞれ異なるメンバーのチームが対応すること,ある程度のパターン化はできるものの一人として同じ経過をたどらないこと,装具の選択肢が多いことなどが装具療法の難易度を上げている.脳卒中治療ガイドライン2021によると装具療法のエビデンスは推奨度Bと徐々に向上している3)が,最適な作製時期およびその装着開始時期は明らかではない4).
本稿では脳卒中に対し装具療法を行ううえでの基本的事項,適応と作製のタイミング,装具療法と同等の効果といわれる機能的電気刺激(functional electrical stimulation:FES)について解説する.
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