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本号では「多分野に広がる理学療法」という,本誌でも珍しい特集を組んだ.理学療法から得られた所産をさまざまな分野に応用して価値ある創造性をつくり出しておられる先生方の力強いメッセージである.自律して困難を突破してこられた力強い原稿が並べられた.
大田氏は企業理学療法士として築いてこられたさまざまなご苦労を具体的に執筆いただき,医療機関での勤務と一線を画した内容を知ることができる.橋本氏,柿崎氏は理学療法から得た技術を企業の製品開発に移行しウエア開発という新たな分野に取り組んでこられた.明らかに臨床技術の社会応用である.梶原氏,阿部氏は両者ともロボットにかかわってこられ,理学療法士目線の存在感を高められている.お二人とも共通して,ロボットが理学療法士の脅威になるのではなくパートナーになるとされている.松井氏,張本氏は起業の貴重なモデルである.松井氏は医療機関でも行政でも果たせなかったことを自分の手で果たすため,理学療法のエッセンスを介護サービスに練り込み,張本氏は必然性からセミナー事業や出版を始められたとされて驚かされた.安倍氏はインソール店を使命感から起業された直接的な理学療法士の成功事例である.八幡氏はミズノで,波多野氏はアシックスでそれぞれスポーツ用品の開発を続けてこられた.開発が必須命題の企業において研究を社会に直接的に還元する場面に理学療法士が活躍していることは多くの人に勇気を与えてくれる.長谷川氏はデイサービスに未病センター,さらにリビングラボラトリーというシルバー産業の研究開発をユーザー参加型で行う画期的な取り組みを行っている.また渡部氏は脊髄損傷専門トレーニングを通じて休眠状態の神経回路が自ら修復できるよう手助けをする一般企業で活躍されている.プロ野球とJリーグからもお書きいただいた.岩本氏は,横浜DeNAベイスターズでチーム内コミュニケーションや予防アプローチを理学療法士の目から打ち立ててこられた.また塙氏は鹿島アントラーズトレーナーとして熱い力を選手に注いでおられ,若い理学療法士にもエールを送っていただいた.
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