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今年の冬は例年にない厳しさで,各地で大雪等の被害が報じられ,読者諸氏も大変な思いをされたことと推察いたします.明けない夜がないように,今号が届くころには春の陽光がそそいであらたな出発点を迎えているでしょうか.
さて今号の特集テーマは,「予防と理学療法」です.特集の冒頭の論文で鈴木隆雄先生は,2000年に始まった「健康日本21」から2012年には「健康日本21(第2次)」が策定される経過の中で,生活習慣病の予防における「運動」の重要性に改めて焦点をあてられています.特に生活習慣病の予防対策の時期について,Gompertz曲線における変曲点の前に施行することが肝要であり,運動効果の指標として具体的には歩行速度が重要であると指摘されています.また,産業保健領域における予防と理学療法(高野論文)では本邦における「産業理学療法士」の必要性が述べられ,勤労者における筋骨格系疾病の障害予防だけでなく生活習慣病への対応が急務であり,具体的な指導のポイントが示されています.さらに産業理学療法の課題として,産業保健分野の理学療法のエビデンスを提示し,この分野の教育を充実し,理学療法士協会の認定制度に結び付けることが挙げられています.スポーツ傷害の予防と理学療法(粕山論文)では,スポーツ傷害予防の簡易な評価方法,および前十字靭帯損傷,成長期スポーツ障害予防へのアプローチが紹介されています.馬場論文では,片麻痺の姿勢変化の予防について,矢状面および前額面での姿勢変化に対応したシーティングの実際例について解説され,森田論文では脊髄損傷者の褥瘡予防について,特に在宅生活を送っている脊髄損傷者への対応策が具体的に提示されています.心不全の再発予防(神谷論文)では,かつては運動療法が禁忌であった時代から最近の考え方を示され,病態の経過時期に応じた運動療法の実際例が提示されています.いずれの論文も「予防」の概念,守備範囲の広さと理学療法士のかかわりの大切さを時間できるものとなっています.
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