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編集後記
網本 和
pp.634
発行日 2003年7月15日
Published Date 2003/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551102443
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ある治療法の「効果」を論じるということは,選択された治療法が「効果がない」かもしれないという考えを抱くことを意味している.科学的検証における懐疑主義こそがパラダイムの洗練をもたらす,とはいえ実際には「効果」を検証するのは並大抵のことではない.事実臨床では「効果がない」と思って治療サービスを提供している理学療法士は一人もいないだろう.
したがって本特集の「物理療法の効果」もまた臨床的パターナリズムを基盤としつつ,さらに進めて科学的検証を志向するものとなっている.山際,他論文では関節リウマチ例の手関節痛に対する低出力超音波治療器として,温熱作用のないビームを用いることで疼痛増悪の恐れがないことが特徴であり疼痛軽減に効果的であったと報告されている.濱出論文は,同様な(機器は異なっている)低出力パルス超音波について,動物実験の組織学的知見から創傷治癒効果が論じられている.銭田,他論文では変形性膝関節症に対する広域多重複合波治療が紹介され,森田,他論文では人工炭酸泉の血液動態への効果が論じられている.前田,他論文では電気刺激による筋力強化に関して,拮抗筋電気刺激法というユニークな方法が検証されている.篠原論文では,低出力レーザー療法について多角的な文献的検討によりその効果と限界,適応と危険性について詳細に論じられている.児玉,他論文では頸椎間歇牽引療法について,対照群との比較において明確な効果が得られなかったことを指摘し,さらなる研究の必要性が強調されている.以上本特集の論文は最新機器の紹介にとどまらず,基礎的臨床的効果について主として実験的検証がなされている点で,その意義は大きいと考えられる.
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