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2007年6月にカナダのバンクーバーで開催された世界理学療法連盟学会WCPTでは,約1,700題の学術発表がなされた.本邦での学術集会に比較して,小児関係,脳性麻痺の理学療法に関する報告がかなり多く,この領域への関心の高さを示すものであった.本邦では養成校の急増を背景として,小児領域での臨床実習を経験しないまま卒業し,就職先の臨床場面ではじめて脳性麻痺児を担当することも稀ではない.今号の特集では,そのような場合も考慮して,基本的な概念から実践的アプローチを含んだ「多方面」からの解説をしていただいた.「多方面」のもつ意味は今号の各論文をお読みいただければすぐに了解いただけると思う.
新田論文では,脳性麻痺の評価とアプローチに関するアップデートな概説が論じられ,機能障害へのアプローチだけでなく,日常生活のスキルに留意すべきであると指摘している.今川論文では,最近注目されている「24時間姿勢ケア」についての基本的理解とその内容についてわかりやすく解説されている.「風に吹かれた股関節」の評価指標としてのGoldsmith指数の紹介など興味深い記述がなされている.大畑・他論文では,脳性麻痺児の筋骨格系の問題点と,それらに対するアプローチが詳細な実践的データに基づいて示され,筋力トレーニングの効果に関する論考がなされている.岩﨑論文では,座位保持に焦点を当て,評価と計測の具体的基準が呈示されている.またこれらの座位保持装置の適用例を症例の呈示によって考察している.堀場論文では,下肢装具の処方と適用に関して論じており,目的に応じた装具の選択が重要であると指摘している.これらの論文は同じ峰をめざして異なったルートで登るように,脳性麻痺を主題としつつ,様々な側面から治療的接近を志向している.それぞれのルートにはそれぞれの特性と限界があることを読者は理解するであろう.
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