特集 重度障害児の理学療法
生命を守り,暮しを築く
山﨑 万里
1
1土佐・希望の家
pp.549
発行日 1991年8月15日
Published Date 1991/8/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551103324
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在宅福祉,地域福祉の充実が叫ばれている今日,重症心身障害児(以下,重症児と略.)の中にも在宅で治療や訓練を受け,学齢になると養護学校に通学しているケースもふえてきました.どんな重度の障害をもった人でも,地域で十分な医療,福祉サービスが受けられ,暮していけたら,どんなに良いことだろうと思います.しかし,日本の現実はまだまだ遠く及ばず,重症児者を抱えた家族の奮闘に頼っているのが現状です.そして,それが限界に達したとき,施設に入所してきます.“良い治療を受けたい”“十分な介護ができなくなった”等々入所の理由はさまざまですが,重症児施設で働く私たちは,そんな家族の思いを受け止め,施設を重症児・者が人間らしく生きてゆける場所にしたいと思っています.
ゆうちゃん(24歳)は高知県の西端の三原村の出身で,4歳のときに入園してきました.重症児のゆうちゃんですが,“イエス”“ノー”の意志表示がはっきりしており,野球,相撲などのスポーツ大好き少年でした.しかし,自分の気持ちを伝えることができなかったり,納得できなかったりすると緊張が増強し,胃内出血,コーヒー様嘔吐を誘発しました.そして18歳のころからベッドで過ごすことが多くなり,経口摂取も困難になり,止むを得ず経管栄養を併用するようになりました.
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