書評
—奈良林 祥 著—「家族計画」/「暮しの手帖」(第34号)人生最初の衣裳を読んで
村松 稔
pp.42-45
発行日 1956年6月1日
Published Date 1956/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201071
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最近の自然科学の進歩はまことに目ざましい.と同時に科学の専門化ということが目立つ.医学もその例外ではない.臨床の各科が更に専門細分化し,基礎医学も多岐な研究にむかつてゆく.残念なことに,この傾向がかたよつたすすみ方をする時,医学の対象である人間というもの,それが複雑な心理,情緒,感情に支えられた生きものであることがとかく忘れられる.技術には詳しいが,その根柢を貫く精神がはつきりしなくなる.
私どもが最大の関心を寄せている家族計画にもこういうおそれが多分にある.一般の大衆に働きかけて家族計画を説く時に,最も重要なことは「何故に家族計画をすすめるか」という考え方である.受胎調節の方法,技術の研究,もとより大切である.しかしもとになるのはどうして家族計画をこうも一生懸命説明するのか,どういう所にそれだけの価値があるのかということである.私どもが見聞している家族計画のモデル地域でもその成否のかぎはこの点にあることが明らかである.
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