やさしい目で きびしい目で・139
信頼の上に築かれるもの
天野 珠美
1
1川沿眼科
pp.1163
発行日 2011年7月15日
Published Date 2011/7/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410103763
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毎年,正月になると患者さんから年賀状をいただきます。中には駆け出しの医者だった頃に診ていた患者さんもいて,長年お会いしていないのに毎年年賀状で近況を報告して下さいます。皆,私を医師として,人間として育ててくれた患者さんたちです。
私事ですが,昨年父が心疾患で入院しました。元来健康人でしたので,家族はあわてました。医師である私も「専門外」ということで不安でいっぱいでしたが,循環器医師の説明は常に明確で,安心感を与えてくれ,循環器治療の進歩に感謝しつつ病院を後にしました。今回の経験を自分の眼科診療に照らし合わせて考えました。「自分は患者さんに安心感を与えることができているだろうか?」。思えば卒後2年目になり,初めて外来を担当することになって一番心配だったのは患者さんに納得して帰っていただけるかでした。最善をつくしても結果が思わしくない場合,そこに信頼関係がなければ医療訴訟に発展する時代です。今ではインフォームドコンセントはすっかり浸透した言葉ですが,最近よく使われるコンプライアンス,アドヒアランスも以前からその概念は常に診療の中に存在しているのです。根底にあるのは人間同士の信頼関係だと思います。
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