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編集後記
鶴見 隆正
pp.1148
発行日 2012年12月15日
Published Date 2012/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1551102669
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2012年もあとわずかとなりましたが,この1年も国内外を取り巻く社会情勢はとても平穏な年とは言いがたい状況です.尖閣諸島や竹島などの領土に関することでは,隣国との歴史観や価値観の違いに加えて感情的な行動がより問題解決を複雑にしているように感じます.冷静に知恵を出し合い,より良い方向に解決することを願っています.また国民生活に目を向けると,金融貯蓄ゼロの世帯数が28.6%と過去最悪であると金融広報中央委員会は報告しています.この厳しい経済状況のなかで,懸命に高齢者を支え,在宅介護をされている家族の姿が透けてみえてきます.今こそ,安心して暮らせるような社会体制が望まれるときですが,国会周辺では相変わらず「近いうち」という文言の駆け引きばかりで,ひた向きに生活している国民のことを置き去りにしているように感じます.
このような沈みがちな想いをスカッとする朗報が世界中に発信されました.人工多能性幹細胞(iPS細胞)を世界で初めて作製した山中伸弥京都大学教授がノーベル生理学・医学賞を受賞されたことです.iPS細胞の画期的なところは,心筋や神経などの様々な組織細胞に置き換わることで,損傷した臓器や脊髄神経などの修復に用いる「再生医療」の新たな道を開いたことです.受賞コメントの「皆ができないと思っていることをできるようにするのが科学です」という教授のひと言は,難渋する中枢神経疾患の運動療法などに日々取り組む理学療法士の心に響き,力が湧いてきます.
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