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本特集は「介護老人保健施設」です.平成12年に7つのモデル施設からスタートした老人保健施設は,平成12年の介護保険の実施とともに介護老人保健施設と名称が変わり,施設数も3,000余りとなり,今や超高齢社会の医療,保健,福祉を担う核となっています.創設当初はADLや移動能力などの生活活動能力を高め,高齢者の病院からの家庭復帰をスムーズにするための中間施設と位置づけられていましたが,現在は医療・保健福祉施設の機能分担と連携の明確化に加え,高齢者・家族の身体機能や生活ニード,生活環境,社会諸制度などを総合的に捉え直した介護保険制度下での介護老人保健施設としての展開が進められています.また,医療機関の在院日数の短縮化などに伴い回復期の重度な高齢者の入所が増加するなか,自宅復帰に向けた実用性のあるADL指導,個別指導が求められ,同時に介護予防や通所および訪問サービスなど多機能の指導を理学療法士は担っています.
香川氏は,介護老人保健施設の創設時の社会的背景と法的根拠の過程を年譜的に解説され,全国的な入所者の疾病,介護度および入退所の実態にも触れながら,今後の課題と展望について論述しています.そのなかで氏は維持期的ではなく,リハ完成期として地域社会を巻き込む施設機能を目指すべきと述べられており共感を覚えます.宇都宮氏は,個別リハを実施する際の位置づけをICFとの関連で説明し,いかに評価して取り組むかを例示され,パターン化した個別リハに陥らないように調整することの重要性を強調しています.細木氏らは,理学療法士にとってややもすれば苦手な集団リハのポイントについて,日々の実践体験を基にした段階的なアプローチについて解説され,内容の濃い論文となっています.平野氏は,家庭復帰の現状とその阻害要因を分析したうえで,復帰しようとする家庭環境に即した生活指導が重要だと指摘しています.また川渕氏らは,施設内での転倒実態を示され,転倒予防のチェックリストと具体的な対応プラン,そして介護予防との関連についても言及しています.
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