Laboratory Practice 〈微生物〉
新しい食中毒菌としてのプロビデンシア・アルカリファシエンス
本田 武司
1
1大阪大学微生物病研究所
pp.49-51
発行日 2010年1月1日
Published Date 2010/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1543102725
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はじめに
厚生労働省の報告をみると,届出のあった食中毒患者数はここ10年程減少傾向がみられるものの年平均30,000~40,000人を数えている.報告漏れの症例もかなりあると考えられており,実際の食中毒患者はこの5~10倍はあるのではないかと想像されている.これらを減らすには,原因微生物を特定し,発症に至る要点を理解し,適切な予防対策をとる必要がある.このことを考えると,食中毒の原因となる微生物の性質を正しく知ることが重要なのはいうまでもない1).しかし集団発生など食中毒を思わせる所見がありながら,その原因が特定(検出)できない事例は現在でも案外多く,年によっては全食中毒患者の1/4にも及ぶ(表1).おそらくこれらの多くは,既知の食中毒原因を何らかの理由で特定できなかったと考えられるが,未知の病原体が食中毒を起こしている可能性も考えられる.
2000年夏,福井県衛生研究所から筆者の研究室に持ち込まれた食中毒事例をさまざまな角度から検討したところ,これまで食中毒菌として注目されていなかったプロビデンシア・アルカリファシエンス(Providencia alcalifaciens,以下PA菌)が原因菌と考えられる食中毒を見いだした2).そこで,PA菌食中毒の発見の経緯について解説する.
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