Medical Hi-lite
嫌気性菌食中毒
T
pp.58-59
発行日 1964年10月10日
Published Date 1964/10/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1662203230
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わが国の食中毒発生原因のかなりの部分が細菌性食中毒と推定されるが,年々わずかにその10〜15%ぐらいしか原因菌の推定ができず,しかもその大半はサルモネラ菌族,ブドー球菌,病原性好塩菌(腸炎ビブリオ)によって占められている.これらはいずれも好気性菌,もしくは通性嫌気性菌であり,嫌気性菌による食中毒事例の報告がきわめて少ない.しかし,偏性嫌気性菌による中毒はボツリヌス菌によって代表されるように,きわめて症状が激甚なもので,決して無視できない.本年9月,中・四国方面で発生した,いか缶詰中毒も,結局はブドー球菌症と判定されたが,一時はボツリヌス菌中毒がうたがわれ,ショッキングな事件であった.
偏性嫌気性菌中毒は,諸外国では昔から食肉・ソーセージ・自家製瓶,缶詰中毒の原因として注目されていたが,1951年,わが国で始めてボツリヌス菌が飯ずしつけこみ用の桶から発見され(北海道衛研,中村他),さらに1957年,ウエルチ菌(またはウエルシュ菌)が山口県衛研山県らによってその中毒例の報告が行なわれた.とくにウエルシュ菌による中毒例として,1959年北海道富良野町において,2071名の摂食者中1158名の患者をだした事件,1963年,東京都内において,某集団給食施設から摂食者1968名中1491名の患者をだしたりして問題となっている.そこで今,このウエルシュ菌中毒とボツリヌス菌中毒の大要をのべよう.
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