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我々の生活環境に広く浸透している酸・アルカリ性物質による中毒は,世界各国から数多く報告されている。本稿では,その疫学,損傷のメカニズム,損傷部位と重症度,症状,視診を含めた初期評価の方法,そして治療法を述べる。
Summary
●酸・アルカリ性物質は商品により濃度,pHが異なる。損傷程度は濃度,pH,性状,粘稠度,胃内容物の有無,さらに自殺企図の有無に影響される。アルカリ性物質は損傷が深部まで達しやすく食道損傷が強いとされ,また酸性物質は胃にとどまり,胃の損傷を起こしやすいとされるが,一様ではない。
●全身状態として,循環不全,ショックを呈する場合は,穿孔,臓器障害が考えられ,心窩部痛や吐血,腹膜刺激症状があれば,胃を含め広く消化管損傷の存在を示唆する。一方,症状がなく,口咽頭部視診でも所見がみられず,さらに意図的でない誤飲の場合,消化管内の積極的な評価は必要ないとされるが,小児では注意深い観察が必要である。
●消化管損傷の評価には上部消化管内視鏡が使用され,早期の施行が治療方針に寄与し,予後に影響する。最近ではCTも積極的に使用され,侵襲も少なく壊死組織の評価に有効である。各検査の特徴を考慮し,症例により施行の適応やタイミングなどを使い分けることが必要である。
●治療は,急性期においては確実な気道確保を含めた呼吸,循環の安定,さらに消化管粘膜損傷に対しては,牛乳や水を利用した希釈,排泄,プロトンポンプ阻害薬の投与が考慮されるが,狭窄予防の効果も含めて十分なエビデンスはない。
●合併症の食道狭窄をはじめとする消化管狭窄に対しては消化管内視鏡による拡張術,ステント挿入が施行されるが,他の良性疾患より合併症が多く,外科的方法が必要とされることがあり,施行の時期,術式など,各科との連携・協力が必要となる。
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