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卒業シーズンである今月号の特集のキーワード,「こども」からの着想で,こどもも含めて次世代を担う若者について,煙たがられない範囲でエールも込めて日々感じていることを書かせていただきます.何歳までが若者であるのかという定義が必要かもしれませんが,まだ自分が若いと思っている人たちは,ここでは全員若者とさせていただきます(笑).ちなみに,プレ還暦の誕生日を目前にこれを執筆している私には自分を若者と呼ぶ勇気はありません.
“時は金なり”という言葉がありますが,“無駄”と“失敗”は若者の特権,そして宝だと思います.“時は金なり”と相反するように聞こえるかもしれませんが,無駄や失敗にかけた時間がその後の人生や生活を形成する礎の一部を成すのではと考える次第です.初老の歳を迎えてしまうと,これから無駄や失敗を宝だといって開き直ることも武勇伝にすることも自他ともに許容できませんが,若い人たちには無駄や失敗を恐れずに,可能性を決めつけないでもろもろに挑んでもらいたいと思う場面が日常に多々あります.しかし,ここ15年ほどの医学生や若手医師の様子をみる限り,無駄や失敗を回避することが最優先という感じが見受けられます.振り返るとわが国の“失われた30年”のなかで生まれ育った世代であり,親御さんたちはバブル崩壊後の社会変化と対峙して苦労を強いられた世代です.生産性と効率性を何よりも重視し,それらから外れる活動は淘汰されることが王道とされた30年だったように感じられます.戦時の“ぜいたくは敵だ,欲しがりません,勝つまでは”という標語をもじれば,“無駄や失敗は敵だ,寄り道しません,王道にたどり着くまでは”といったところでしょうか? これが今の若い世代の背景にあるのではと勝手ながら考察する次第です.
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