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当方が初めて「あとがき」を執筆したのは2020年の64巻3号で,本稿が掲載されるのも同じく3号です.この2年間は,まさにCOVID-19一色となってしまいました.感染拡大の第5波が落ち着いて新規感染者数も大きく減少し,飲食店やイベントなどの制限も緩和され始めてポジティブな気持ちになりましたので,ぜひとも3月という時期柄に合わせて筆を執るつもりで臨んでいた矢先に,今度は世界規模のオミクロン株の出現.来年のことをいうとウイルスが笑うとは考えていませんが,今思うことを徒然なるままに書かせていただくことにします.
「ワクチンの普及と治療薬の導入で重症例・死亡例が減少してCOVID-19が普通の風邪になるまでwithコロナで頑張るしかない」というような言葉をしばしば耳にしますが,そもそも何をもって「普通の風邪になった」といえるのでしょうか? 風邪,すなわち「かぜ症候群」とは一過性の病態として終息する急性上気道炎であり,その70〜90%はウイルス感染とされています.代表的な原因ウイルスとして,ライノウイルス(30〜80%),コロナウイルス(SARS,MERS,COVID-19の原因ウイルス以外,15%),アデノウイルス(5%)が知られており,個々のウイルスにおいて多数の血清型が存在します.ウイルス分離同定をせずに感染を証明するには,PCRなどによるウイルスゲノムの検出または抗原や抗体の血清学的検出が必要となりますが,多様な原因ウイルスと血清型の存在に加えて,基本的に予後やQOLを左右しないこともあって,実際には感染検査診断法はありません.症状の長期持続や非典型的な症状の合併がなければ結果的に「風邪だった」ということになります.
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